【1】エンジェルズシェアについて理解できる
ウイスキーを熟成をしていくと、『エンジェルズシェア』、日本語では『天使の分け前』と言われる事象が発生します。本日はこのなんともお洒落な響きの『エンジェルズシェア』とはどういった事象なのかついて見ていきたいと思います。
エンジェルズシェア(天使の分け前)とは
引用元:Glen Moray Distillery - Whisky.com
『エンジェルズシェア』とは熟成の過程で樽内のウイスキーが蒸散して、容量が減る事象のことを意味します。熟成の過程において、この蒸散は一定割合で発生し、長期熟成すればする程、樽内ウイスキーの減少量は大きくなります。
ウイスキーを熟成させる樽は木材でできており、木材は樽内のウイスキーを蒸散させるとともに、外気を樽内に取り込むことを繰り返していきます。その為、熟成している地域によって個性が生まれ、例えばアイラ系では潮風を取り込んで『海の味わい』を蓄えていきます。しかし、【取り込む量】と【蒸散する量】の割合では、蒸散の方が多い為、樽内の容量は減少していきます。
また、樽内のウイスキーは主にアルコールと水で構成されていますが、アルコールの方が同じ気温の際に蒸散する量が多い為、長期熟成すればする程アルコール度数が低下していくことも本現象の特徴です。(一部例外はあります)
しかし、上記はあくまでも合理的に解説した場合の話であり、実は『素敵な天使がウイスキーをこっそり飲んでいる』という噂がウイスキー造りに関わる方々の間で広がっています。
引用元:天使 - Bing images
こっそり飲んでもいいけど、未成年は飲んだらあかんで!
エンジェルズシェアの蒸散量について
年どれくらいの割合で樽内のウイスキーが減少するかについては、熟成している地域の気候に大きく左右されます。それでは具体例を挙げてみていきましょう。
■スコットランド
引用元:Glasgow, Gateway to Scotland: Witness the beauty and history of these 15 majestic castles (usatoday.com)
スコットランドは安定した冷涼な気候であり、エンジェルズシェアによる樽内のウイスキーの減少幅は約2~3%/年と言われています。つまり、100樽を仕込んだ場合、1年毎に2~3樽が蒸散していく計算になります。10年熟成させた場合、約30樽分が蒸散します。※年数を重ねるごとに蒸散幅は減少していきますので、実際の減少分はもう少し少なくなります。また、日本もスコットランド程度と言われています。
■アメリカケンタッキー州
バーボン造りが盛んなケンタッキー州は寒暖の差が激しく、エンジェルズシェアによる樽内のウイスキーの減少幅は初年度が約10~16%/年、2年目以降は5%と言われています。つまり、100樽を仕込んだ場合、1年目に10~16樽が蒸散していく計算になります。10年熟成させた場合、約50樽分が蒸散します。※年数を重ねるごとに蒸散幅は減少していきますので、実際の減少分はもう少し少なくなります。
■台湾
カバラン蒸留所がある台湾は熱帯な気候であり、エンジェルズシェアによる樽内のウイスキーの減少幅は何と、約17~18%/年と言われています。つまり、100樽を仕込んだ場合、1年目に17~18樽が蒸散していく計算になります。10年熟成させた場合、約90樽分が蒸散します。仮に、カバランから超熟のウイスキーが販売されることがあれば、相当高価な価格帯になるのではないかと思います。※年数を重ねるごとに蒸散幅は減少していきますので、実際の減少分はもう少し少なくなります。
以上、本日は『エンジェルズシェア』について見てきました。天使が味見をすればする程、ウイスキーがおいしくなるって噂です。お酒は一人で飲むのも楽しいですが、シェアすれば美味しさは各段に上がりますよね。皆様、乾杯!