ウイスキー、時々和食

-CHIKURYA WHISKY-

【製造方法】ウイスキー製造工程の『熟成(マチュレーション)』について

【1】ウイスキー造りの工程である、『熟成』について理解できる

【2】『熟成』の工程について理解できる

 

 ウイスキー造りにおいて、『蒸留』の次の工程になる『熟成』。『マチュレーション』と呼ぶケースもあります。本日は本工程がどのようなものなのかについて詳しく見ていきたいと思います。ウイスキー造りにおいて、殆どの時間を熟成に費やすため、ウイスキーの味を最も左右させる重要な工程です。

 前工程の『蒸留』について詳しく知りたい方は以下リンクを参照ください。

chikurya-whisky-tokidokiwasyoku.com

 

ウイスキーの主な製造工程について

 ウイスキーは世界中で製造されていますが、どのような種類のウイスキーであっても”ウイスキー”と名前が付いているものは、以下の工程を経て造られます。

◆ウイスキー造りの工程◆
・製麦(モルティング)
・糖化(マッシング)
・発酵(ファーメンテーション)
・蒸留(ディスティレーション)
・熟成(マチュレーション)

 

 工程をより細分化することは可能ですが、まずは上記の各工程を理解することでウイスキーの楽しみ方に深みがでると思います。好きな銘柄が上記工程でどのような工夫やこだわりを持っているのかを知れば、きっと今まで以上にお気に入りの銘柄を好きになれると思いますよ。本日は上記工程の中でも『熟成』について詳しく見ていきたいと思います。

 

『熟成(マチュレーション)』について

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樽での熟成光景

引用元:Distillery | Located : Suntory Yamazaki Whisky Distillery, O… | Flickr

 『熟成(マチュレーション)』とは、蒸留の工程で生成したニューポット(蒸留液)の角を取り除き、まろやかにウイスキーらしくする工程のことを言います。

 蒸留したてのニューポットはご想像の通り、アルコールの強い刺激で非常に荒っぽい味わいです。そこで、樽に入れて、樽の香りや長い時間の呼吸により深みを重ねていきます。

 具体的には、長期間樽内で寝かせることで、まずは蒸留後の人間にとって不快と感じる香り成分が取り除かれていきます。

 次に取り除かれて何かの香りを吸収できる状態になると、樽の木材から、香り成分や色素成分をゆっくりと取り込んでいきます。また、並行してアルコールと水の分子が結合していき、まろやかさを生み出していきます。

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ボウモア蒸留所

引用元:Exclusive Interview With David Turner, Bowmore Distillery Manager (luxuriousmagazine.com)

 更に、木でできている樽は呼吸をします。樽内のウイスキーを蒸散させては、外気の空気や湿気を取り込んでいく工程を繰り返して、自然との繋がりを強固にしていきます。例えは、アイラ銘柄は主に海のそばに蒸留所が位置するケースが多く、海の香りを取り込んでいくと言われています。

 

『熟成(マチュレーション)』の工程について

◆熟成(マチュレーション)の工程◆
①ニューポットに加水 
②樽にニューポットを詰める
③ウエアハウスで熟成       
 
①ニューポットに加水
 ニューポットのアルコール度数は単式蒸留器で蒸留したもので約70%前後、連続式で蒸留したものはそれ以上の為、加水を行い、一般的に熟成に適していると言われるアルコール度数63%前後に調整します。
 
②樽にニューポットを詰める
 アルコール度数63%前後にしたニューポットを樽に詰めます。後ほどご紹介しますが、どのような種類の樽を使用するかによって味に大きく影響します。
 
③ウエハウスで熟成
 ウエハウスと呼ばれる熟成庫で熟成を行います。銘柄によって本熟成期間は異なります。一般的には10~20年が熟成のピークであり、25年以上になるとウイスキーの劣化が始まると言われています。しかし、厳密に環境管理された場合はその限りでないようです。
 

熟成樽の種類について

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 一言で、『どのような種類の樽を使用すれば、このような味になる!』とは解説はできません。なぜなら、樽の歩んできた歴史や外部の気候、蒸留の仕方等様々な要素が重なってその銘柄の味が決定されるからです。しかし、どのような種類の樽を使用すれば、どのようなウイスキーになるかの大枠の傾向はありますので、これからその点について解説していきます。

 

樽の履歴による種類

■バーボン樽

 バーボンを熟成させた後の樽。バーボンづくりにおいては新樽を使用する事が決められている為、入手自体は容易で、スコッチで最も使用されています。本樽を使用した場合、木の香りやバニラ香とよく表現される香り、味わいとなる傾向にあります。

 

■シェリー樽

 シェリーを熟成させた後の樽。シェリー自体が甘い為、本樽を使用した場合、果実香やシェリー香と言われる、甘い香りや味わいになる傾向にあります。

 

■ワイン樽

 ワインを熟成させた後の樽。ウイスキーに風味を加える為に、ウッドフィニッシュに使用されるケースが多いです。

 

■新樽 

 新樽といえば、バーボンです。しっかり、ハッキリした力強いフレーバーになり、熟成も早い傾向にあります。その為、バーボンはあまり長い期間熟成はさせない傾向にあります。

 

樽の材質による種類

■ホワイトオーク樽

 主に北米産のホワイトオークを使用した樽。スコッチでは90%以上がこのホワイトオークを使用していると言われています。漏れが少なくお酒全般の熟成に優れている材質です。バニラのような香りを生み出す傾向にあります。

 

■ミズナラ樽

 日本固有のミズナラを使用した樽。西洋から見た場合に『オリエンタルテイスト』と表現されることがあり、日本人にとっては飲みやすく自然豊かな香りと感じる傾向にあります。近年特に注目されています。

 

■オーク樽

 オークを使用した樽。濃い色素を生み出し、タンニンが豊富でダークチョコのような味を生み出す傾向にあります。マッカラン等で使用されています。近年は需要が増加しており、入手困難となっています。

 

 以上、本日ウイスキーの製造工程の中でも『熟成』について見てきました。熟成の中でも樽について語りだすと、皆さんのお時間を数年は拘束してしまう可能性が高い為、本日はここまでといたします。