【1】碧Aoがどのようなウイスキーか理解できる
【2】各種飲み方でのレビューが分かる
本日は、サントリーが保有する、5大ウイスキーの蒸留所の原酒をブレンドした銘柄、『サントリーワールドウイスキー 碧Ao』について見ていきます。内容を詳しく知る程、本銘柄の魅力が理解できます。
碧Aoについて
ウイスキーは世界各国で造られていますが、その中でも代表的な生産地で造られるウイスキーを『5大ウイスキー』と呼んで特別に扱われる事が一般的です。5大ウイスキーとは、アイリッシュ、スコッチ、アメリカン、ジャパニーズ、カナディアンとなります。
今回ご紹介する碧Aoについては、サントリーが保有する5大ウイスキーの蒸留所の原酒がブレンドされており、構成としては、以下となります。
種類 | 蒸留所 |
---|---|
アイリッシュ | クーリー蒸留所 |
スコッチ | アードモア蒸留所 グレンギリー蒸留所 |
アメリカン |
ジムビーム |
ジャパニーズ |
山崎蒸留所 |
カナディアン | アルバータ蒸留所 |
『個性を活かして5大ウイスキーを重ね合わせる』をコンセプトに造られており、確かに、飲み方に応じて異なる味わいを楽しめるのが本銘柄の魅力です。飲み方を変えることで、アードモアやクーリー系のピートが現れたり、アメリカンらしい甘みが現れたり、グレンギリー由来の華やかさが出たり、ジャパニーズの上品な味わい、カナディアンの柔らかさとキレの良さ等様々です。ある程度、上記蒸留所が造る銘柄を飲んだことがあるのであれば、ロック、ハイボール辺りで存分に楽しめ、価格に対する価値を理解できると思います。
一方、ウイスキー経験の比較的浅い方が飲むと、『価格と内容が釣り合わない』との評価になる傾向にあります。理由は、碧Aoはコンビニ等でも見かけることができ、ターゲット層を広く設定していますが、多くの方にとって、碧Aoを構成する蒸留所のウイスキーを飲んだ事が無いので(あっても、山崎、白州、ジムビーム位)、飲み方による変化の価値が十分に伝わらないのだと思います。その点が勿体ない!
折角なので、この機会に構成銘柄を楽しむ旅に出てみるのかいかがでしょうか?お勧めの旅のコースは、以下になります。旅を完了して碧Aoに戻ってきた際には、きっとより多くの価値を見出す事ができると思います。
■旅のしおり
①碧Aoを購入し、様々な飲み方を試してみる。
②グレンギリー12年を飲んで、ウイスキーの華やかな世界を楽しむ
③アードモア レガシー、カネマラ(クーリー蒸留所)を飲んで、ピートの違いを楽しむ
④ジムビームを飲んで、アメリカンの甘み、樽の深みを楽しむ
⑤再度、碧Aoに戻ってきて、飲んだ銘柄の特徴を探しながら楽しむ
※余裕と機会があれば、山崎、白州、何かしらのカナディアンを飲む
■旅の持ち物
各種蒸留所について
碧Aoに関連する蒸留所を、数か所ピックアップしてご紹介します。いずれも素敵な蒸留所です。
■アードモア蒸留所:スコッチ
引用元:Supercritical issues feasibility study for technology at Beam Suntory’s Ardmore distillery
蒸留所の規模自体はハイランド中では比較的大きいのですが、その地域で採れる大麦、ピートを使用してウイスキーを造る点は、昔も今も変わっておらず、大切にされているポリシーとなっています。とはいえ、規模が大きい為、昔のように自社で原料の準備を行うには手間とコストがかかる為、現在はモルトスターと呼ばれる麦芽製造会社に細かいレシピを用意して原料の確保を行っています。
今となっては、シングルモルトの『アードモア レガシー』の知名度がありますが、長らくブレンデッド用の原酒だけに注力してきた蒸留所になります。
■山崎蒸留所:ジャパニーズ
引用元:Basic Information|Suntory Yamazaki Distillery
ウイスキー好きにとっては聖地と言える場所になります。JRの車窓から本蒸留所が見えた際には、ほっとした気持ちになります。
本蒸留所は、1923年に建設を着手し、翌年の1924年に完成します。そして、1924年11月11日に蒸留を開始しました(所謂、日本のウイスキー元年)。スコットランドのハイランド地方の蒸留所をベンチマークにしている為、概ねハイランドの蒸留所と類似していたようです。その後、拡張や再設計が実施され、現在へと繋がっていきます。
現在においては、蒸留所と街が一体化しており、どういった理由でこの地に蒸留所が建設されたのか疑問に思われる方も多いと思いますが、ウイスキー造りに適した気候(木津川、宇治川、桂川があり程よい湿気がある等)と上質な水があったからと言われています。特に水においては、千利休が山崎屋敷をかまえて、豊臣秀吉の為にお茶を点てたのが、この山崎の水でした。また、この水は当時のスコットランドからもお墨付きを得た品質でした。
これらの上質な環境下で、発酵槽から、ポットスチル、蒸留形式も異なる方法を多数組み合わせて世界に類がない程の、多彩な原酒造りを行っています。そしてこの原酒が複雑なテイストを生み出していきます。
■クーリー蒸留所:アイリッシュ
引用元:Cooley Distillery - Whisky.com
クーリー蒸留所は1989年にジョン・ティーリング氏によって創業を開始しました。ポットスチルに加え、連続式蒸留器が設置されている蒸留所になります。つまり、シングルモルトに加え、グレーンウイスキーも製造できる為、幅広い種類のウイスキーを生み出すポテンシャルを秘めた製造所となります。創業者のジョン氏は『アイリッシュの革命児』と呼ばれており、積極的にアイリッシュの型を破る挑戦をしています。
大元のアイリッシュは2回蒸留のピート麦芽を使用するスタイルでしたが、英連邦政府が歴史的対立等から、大麦麦芽に超高額の関税をかけた為、税逃れの為に未発芽の麦芽やピートを焚かない原料を使用したのが、現在のアイリッシュのスタイルとして定着したと言われています。その為、ジョン氏の挑戦は、アイリッシュの威厳を取り戻す挑戦と言えるのかもしれません。
代表銘柄として、『カネマラ』に加え、シングルモルトの『ターコネル』やコーンのみを原料としたシングルグレーンの『グリーノア』等があります。
テイスティング
お勧めは、公式通りハイボールかロックとなります。ストレート等は評価が分かれると思います。ハイボールとロックでの飲み方を探求すれば面白くなってくると思います。
■ストレート
香りはバニラ香がメインであり、その中にライトなオレンジやオレンジピール、少しハーブの様なニュアンスもあります。香りはバーボン樽を使用したスコッチと言った感じであり、特段特徴があるわけではなく、丸くまとまっています。
テイストについては、ドライでキレがあり余韻は短いです。キレの良さはカナディアンでしょうか。中間あたりにグレンギリーらしい少しの華やかさとアードモアとカネマラの両方の特徴を少し感じます。樽感も強いので、おそらくアメリカンの影響でしょうか。正直ストレートについては、評価は分かれると思います。複雑とも言えますし、まとまりがないとも言えます。
■少量の加水
香りはストレートの特徴と大きな差異はない様に思います。一方、テイストについては、土っぽい軽いピートを感じます。クーリー蒸留所のピートなのかなといった感じです。
■トワイスアップ
樽の渋みが目立ち、あまり飲みやすくは無いように感じます。グレーンのスパイシーさもあります。トワイスアップ好きには本銘柄はあまりお勧めしません。
■ロック
ボディに厚みが出て、バーボン系の甘みの中に、複雑な味わいを感じます。少し樽の渋みが強いのは露出させたい特徴なのだと思います。ストレートより一体感があり、その中に各銘柄の要素が盛り込まれています。私は美味しいと思います。ただ、分かりやすい味わいではないので、ウイスキーの種類を飲んでいないと価格に対する価値を見出すのは難しいかもしれません。
■ハイボール
急に飲みやすい銘柄になります。今まであまり見えなかった、ジャパニーズの飲みやすい要素がでてきます。ほのかなスモーキーさも心地いいです。アードモア系のピートも感じます。碧Aoはハイボールのレシピを深堀していくのが最も栄えると思います。
以上、本日は『サントリーワールドウイスキー 碧Ao』について、見てみました。ハイボールのレシピを中心に多彩な飲み方を楽しめるのが、本銘柄の魅力です。サントリーのホームページにも多くのレシピが掲載されているので、是非参考にしてみて下さい。また、碧Aoを構成するウイスキーはどれも素晴らしく、試す価値は十分にあります。
また、以下動画でも分かりやすく解説されています。