【1】イエロースポット12年がどのようなウイスキーか理解できる
【2】各種飲み方でのレビューが分かる
本日は、アイリッシュの伝統的製法で造られ、複雑さと分かりやすさのバランスが良い実力派銘柄、『イエロースポット』について見ていきます。流石ワイン商社が手掛ける銘柄であり、マラガ樽というウイスキーでは比較的珍しい樽が熟成で使用されています。
イエロースポット12年について
イエローポット12年は、アイルランドで有名なワイン商社のミッチェル&サン(Mitchell&Son)社が所有するブランドであり、現在はジェムソン等で有名なミドルトン蒸留所に委託して製造、販売しています。
アイリッシュの中でも、シングルポットスチルウイスキーと言われる種類に分類され、原料の一部に未発芽の麦芽を使用し、3回蒸留する(一般的なウイスキーは2回蒸留)ことで、オイリーさと、ライトな酒質がベースとなります。そこに、ワイン商社としての、樽の目利きのスキルが加わっています。
銘柄名の由来は、熟成年数に応じて樽にペンキで印をつけていたことに起因しております。本シリーズの主な銘柄は、グリーンスポット、イエロースポット12年、レッドスポット15年になります。それぞれに個性があり、いずれも樽のマネージメントが非常に上手い印象を受けます。
イエロースポット12年の熟成樽の構成は、バーボン樽、シェリー樽、マラガ樽になり、熟成年数は12~16年のレンジとのことです。マラガ樽はウイスキー派にとってはあまり聞きなれないですが、シェリー同様、アルコール度数を高めたワインであり、比較的甘口の白ワインベースの物が多いそうです。
全体としては甘めであり、バランスが良く、適度に複雑で、適度に明快な香りとテイストを持っています。
香りについては、オレンジや焼きリンゴ系のフルーツを感じつつ、マラガ樽由来と思われる桃の様なみずみずしさも感じます。胡椒の様なスパイシーさや、ビスケットの様な甘みも少し持っています。
テイストも概ね香り通りであり、12年熟成の滑らかさも相まって複雑ですが、まとまりの良い仕上がりの様に感じます。多彩な味わいですので、他のウイスキーと比較して、飲む方によって印象や感じ取れるテイストがより異なるのではないかと想像もします。その点がウイスキーの醍醐味であり、本銘柄の最大の魅力です。
ミドルトン蒸留所について
引用元:Jameson Distillery Midleton - All You Need to Know BEFORE You Go (tripadvisor.com)
1966年にジェムソン社とその他2社が合併して造られたのが本蒸留所です。流石、アイリッシュのグローバルシェアが70%を超えているだけあり、非常に規模が大きいことでも有名です。
割りと最近に建てられた蒸留所なのかと思われるかもしれませんが、本蒸留所の前身は1825年に創業を開始した旧ミドルトン蒸留所であり、現在は博物館として使用されています。(上記の写真)また、周辺も観光地化しており楽しめる街並みとなっています。
本蒸留所はアイリッシュの伝統を大切にしており、アイリッシュ特有のオイリーさと酒質の軽さを追求した『シングルポットスチルウイスキー』を丁寧に製造しています。
本蒸留所が造るウイスキーとしては、『ジェムソン』、『レッドブレスト』、『グリーンスポット』等があり、国内においては決して知名度は高くない銘柄もありますがで、堅実で伝統的なウイスキーの製造をされています。
テイスティング
ストレートかロックが魅力的です。ストレートではバランスの良い複雑さ、ロックではスパイシーな複雑さをメインで楽しめそうです。ウイスキーはハイボール以外の魅力もある事を教えてくれる素敵な銘柄です。
■ストレート
全体としては甘めにまとまっていますが、複雑さも十分持ち合わせており、ビギナーからベテランまで広く楽しめる銘柄かと思います。
香りについては、オレンジや焼きリンゴ系のフルーツ、マラガ樽由来の白桃の様なみずみずしさ、ビスケットの甘み等です。胡椒の様なスパイシーさも少し持っています。人によっては、かすかな煙も感じる様です。(私は分かりませんでした)
テイストも概ね香り通りであり、滑らかな複数の甘みが中心であり、香りからはあまり感じなかった穀物の素朴な甘さもありそうです。ポットスチルらしい独特なスパイシーさも持っています。多彩であり楽しい銘柄です。
■少量の加水
ストレートと比較して、少しオイリーさとスパイシーさがトーン高くなるように感じます。好み次第ですが、ストレートの方が、複雑さと分かりやすさのバランスが良いように感じます。
■トワイスアップ
人によって感じ方に大分差がありそうですが、私は赤いリンゴの甘みが強調されて感じます。楽しく飲めますが、私はストレートが好みです。
■ロック
ストレートと比較して、甘みの複雑の幅が狭くなる代わりに、スパイシーの幅が広がります。横にも深さ方向にも広がるので立体感が出てきます。苦しゅうない。
■ハイボール
ハイボールはなんでも美味しく飲める方ですが、まあまあです。良い複雑さがある銘柄であり、その魅力を知っている分、ハイボールでは物足りなさを感じます。