ウイスキー、時々和食

-CHIKURYA WHISKY-

【製造方法】ウイスキーのフレーバーを決める重要な要素であるピートについて

【1】ピートについて理解できる

【2】『モルティング(製麦)』でのピート乾燥の工程が理解できる

 

 燻製の様なスモーキーさ(Smoky)、ヨードのような薬品香(Medicinal)が合わさった風味を『ピーティ(Peaty)』と良く表現されます。どのようにしてこれらのテイストをウイスキーに付加するのでしょうか。また、ピートとはそもそもどの様なものなのでしょうか。それでは見ていきたいと思います。

 

ウイスキーの主な製造工程について

 ウイスキーは世界中で製造されていますが、どのような種類のウイスキーであっても”ウイスキー”と名前が付いているものは、以下の工程を経て造られます。

◆ウイスキー造りの工程◆
・製麦(モルティング)
・糖化(マッシング)
・発酵
・蒸留
・熟成

 上記の中で、ピートを使用する場面は一般的に『モルティング(製麦)』になります。また、『モルティング(製造)』の工程を細分化した場合、以下のように分ける事ができ、『④乾燥』時にピートを焚くか焚かないかでピーティなウイスキーかそうでないかの分かれ道となります。

 

◆製麦(モルティング)の工程◆
①収穫~選粒   :均一に発芽する準備
②浸麦      :発芽できる準備
③攪拌(かくはん)  :発芽を促す
④乾燥      :発芽を止める
 『モルティング(製麦)』の工程について詳しく知りたい方は以下リンクを参照ください。

ピートとは何か?

f:id:chikurya:20220320120501j:plain

引用元:Green plans for saving peat are risky to whisky | Scotland | The Times

 ピートとは堆積した、主に植物が炭化したものです。一見、土のように見えますが、乾燥させると可燃性があり燃料として使用できます。ピートができる気候は寒冷地の湿地帯であり、まさにスコットランドは最適な環境です。その為、スコットランドではピートは身近な存在です。昔から燃料として使用されており、現在でもアイラ島等では暖炉の燃料として活躍しています。

 ピートができるうえでの植物の種類や炭化具合によって、ウイスキーのフレーバーに大きく影響を与える為、詳細に採取地域や使用方法を決定している蒸留所が殆どです。

 スコットランドやアイルランドで採れるピートは主に『ヘザー』と呼ばれるツツジ科の植物であり、以下の写真のように夏にはヘザーの花で覆われた丘の景色が、スコットランドでは良く見かける事ができます。

f:id:chikurya:20220320144614j:plain

ヘザーの花で覆いつくされた丘

f:id:chikurya:20220320144716j:plain

ヘザーの花

引用元:イギリスの大地を赤紫に彩るヘザーの花 イギリス/グラスゴー特派員ブログ | 地球の歩き方 (arukikata.co.jp)

ピートを焚く工程について

f:id:chikurya:20220320145252j:plain

キルン

引用元:Why Do We Love Smoky Flavors — Especially in Scotch? - Eater

 質の良いウイスキーを造るには、発芽させた大麦(モルト)を良いタイミングで乾燥させて、余分に糖が消費されないように発芽をストップさせる必要があります。

 モルトを乾燥させる為に使用する伝統的な機械を『キルン』と呼び、燃料として『ピート』を使用した場合にウイスキーにピーティさが付加されます。

 乾燥を『ピート』のみで行った場合、香りが強すぎてしまう為、各蒸留所は以下の項目を特に見極めながら本作業を行います。正に職人の技です。

 

①使用のタイミング

②ピートを焚く時間

③ピートの量

 

 モルトに炊き込むピートの度合いは『ppm』(フェノール値)という単位で表現されます。基本的にアイラ島で造られるウイスキーは、南に行けば行く程、この『ppm』が高くなり、よりピーティとなります。

 例えば、アードベッグのフェノール値は約60ppmであり、ちょうど中間に位置するボウモアが約27ppmであることを基準に考えると非常に多くのピートが炊き込まれている事が理解できます。

 

 以上、本日は『モルティング(製麦)』の中でも乾燥の工程で使用されるピートについて見てきました。折角ですので、本日は『アードベッグTEN』でしっぽり飲みましょかね。本日もお疲れ様でした。乾杯。