ウイスキー、時々和食

-CHIKURYA WHISKY-

【アイリッシュ】アイリッシュの衰退から新たな歩みの歴史について

【1】アイリッシュ・ウイスキーが衰退した理由が理解できる

【2】アイリッシュ・ウイスキーの新たな歩みについて理解できる

 

 近年、国内でも急速にアイリッシュ・ウイスキーのブームが到来し始めています。アイリッシュはなぜ過去衰退し、近年再注目されているのでしょうか。その理由を見ていきます。

 

アイリッシュ衰退の要因について

 かつては、生産量世一の地位を確立した、スコッチですが、1920年代以降急速に衰退していきます。なぜ衰退したのでしょうか。理由は主に以下3点になります。

 

・伝統的手法に固執(連続式を採用しなかった)

・独立戦争による疲弊と市場からの締め出し

・アメリカの禁酒法による市場縮小

 

 それでは、それぞれについて解説していきます。

伝統的手法に固執(連続式を採用しなかった)

 1831年に連続式蒸留器がアイルランド人であるイーニアス・コフィーによって実用化されました。しかし、アイランドは伝統的な単式蒸留に固執し、連続式を採用しませんでした。一方、スコットランドは柔軟に採用し、シングルモルトとグレーンをブレンドした飲みやすいブレデッド・ウイスキーを作り出し、イングランドやアメリカを中心に勢力を拡大しました。連続式を実用化したのがアイルランド人ですので、何とも皮肉な結果です。詳細は以下を参照ください。

chikurya-whisky-tokidokiwasyoku.com

また、単式と連続式の違いと特徴については、以下を参照ください。

chikurya-whisky-tokidokiwasyoku.com

 

独立戦争による疲弊と市場からの締め出し

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引用元:アイルランド独立戦争 - Wikipedia

 1919年に始まった、英国からの独立戦争とその後の内紛により、経済が疲弊します。そして、イングランドから独立した事により、制裁として一大市場の英国から排除されました。

 アイルランド独立戦争の発端は、英国政府がアイルランド自治区として、アイルランドの独自自治を約束していたが、第一次世界大戦によってその計画が延期(事実上の白紙に近い)されたことにより、不満をもったアイルランド民主主義者がアイルランド共和国を建国を宣言し、独立戦争へと発展しました。

 

アメリカの禁酒法による市場縮小

 アメリカでは飲酒に対して批判的な考えを持つピューリタン(清教徒)が中心となり、運動を起こし、1920年にアルコールの製造・販売を禁止する『禁酒法』が施行されました。一時的に市場が大幅に縮小し、アイリッシュの売り先を失う結果となりました。

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引用元:禁酒法がアメリカのお酒の歴史にもたらした変化を学ぶ|CHEER UP! 毎日のワクワクした暮らしを応援するポータルメディア (sapporobeer.jp)

 

復活の歩みについて

 1970年代に入ると蒸留所の統廃合が進んでいきます。当時残っていた蒸留所が生き残りをかけて、すべて国境を越えて合併し、アイリッシュ・ディスティラーズ・グループ(IDG)を設立します。その際に蒸留所が以下2つに集約されます。

・ブッシュミルズ(北アイルランド)

・ミドルトン(アイルランド共和国)

 徐々にアイリッシュ造りの立て直しに向けてウイスキー造りが行われるようになり、1989年にクーリー蒸留所、2007年にはクーリーがキルベガンを復活させ、現在も4大蒸留所となりました。その後2010年頃からは、小規模な蒸留所が次々と誕生に、新しいアイリッシュ・ウイスキーの製造を行っており、活気が戻りつつあります。

 特に北米での認識が高く、次いで日本でも飲みやすさからブームが起きつつあります。それでは、これほどまでに人気が出始めているのか。その理由は原点回帰をして、ポットスチルウイスキーに再度力を入れている為です。この独特なオイリーさと滑らかさはアイリッシュならです。

 

■ポットスチルウイスキーとは

●原料:モルト(大麦麦芽)、大麦(未麦芽)

●蒸留:単式蒸留で3回蒸留 ※スコッチは殆どが2回

●特徴:独特のオイリーさ、油系のフレーバー しかし比較的軽く飲みやすい

 

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引用元:オールドブッシュミルズ蒸留所 / イギリス 【TAVITT AIR】旅行提案APP

■ブラックブッシュ

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 現在アイリッシュの中で一番、勢いのあるブッシュミルズが製造するウイスキー。アプリコットのようなフルーティーで上品なアロマを持ち、ボディーは3回蒸留している為、軽めでさらっと飲める。ライトボディにも関わらず、熟成された奥深さがあり、満足できる銘柄。日本人も好むであろう飲みやすさ。ロックが一番おいしいと感じる。

 

以上、本日はアイリッシュの衰退から新たな歩みについて見てみました。アイルランドで沢山蒸留所が生まれて、良きアイリッシュに出会えるのが楽しみです。