【1】アイリッシュウイスキーの特徴が理解できる
【2】アイリッシュウイスキーの蒸留所の概要が理解できる
近年再び、注目を集め始めている、アイリッシュウイスキーとはどのような特徴があり、どのような蒸留所があるのでしょうか?それでは見ていきましょう。
アイリッシュ・ウイスキーの概要と特徴について
アイルランドはアイルランド共和国と英国領の北アイルランドから構成されています。 かつては、ウイスキー生産量が世界1位でしたが、1845年の主食(ジャガイモ)が疫病による不作から大飢餓が発生します。さらにアイルランド独立戦争と内紛による疲弊。独立した事により一大市場の英国から排除されます。また、伝統的な製造にこだわり続け、大量生産できなかったことも、大きな要因です。(単式蒸留にこだわった)
そして、さらに最大の輸出国のアメリカで禁酒法が施行されたことが追い打ちをかけるまさに、アイリッシュにとっては地獄の連続でした。
アイリッシュウイスキーはアイルランド共和国と北アイルランドで造られるウイスキーであり、モルトウイスキー、グレーンウイスキーに加え、シングルポットスチルウイスキーが有名で、滑らかでオイリーなフレーバーが特徴です。
それではここで質問です。
ウイスキーにはWhiskyとWhiskeyのスペルがあります。その違いは何でしょうか?
一般的にスコッチ、ジャパニーズ、カナディアンは『Whisky』と表記され、アイリッシュは『Whiskey』と表記され区別されます。どちらが、正しい・間違っているではなく、このように区別されて表記されてきた歴史があります。確かに表記に”e”が付いていますね。
アイリッシュ・ウイスキーの種類について
アイリッシュは一般的に4種類(シングルポットスチルウイスキー、モルトウイスキー、グレーンウイスキー、ブレンデッドウイスキー)に分類できます。それでは、それぞれについて解説していきます。
シングル(ピュア)ポットスチルウイスキー
●原料:モルト(大麦麦芽)、大麦(未麦芽)
●蒸留:単式蒸留で3回蒸留 ※スコッチは殆どが2回
●特徴:独特のオイリーさ、油系のフレーバー しかし比較的軽く飲みやすい
アイリッシュといえば、一般的にシングルポットスチルウイスキーを意味する場合が殆どです。かつては、原料に上記以外にオート麦、小麦、ライ麦が使用されていましたが、現在は殆どの銘柄がモルト(大麦麦芽)と大麦(未麦芽)のみ使用しています。
原料に大麦(未麦芽)を使用している点が独特のオイリーさとフレーバーを生み出しています。本来はモルト100%を使用することで、糖化を促進させますが、未麦芽を一定数使用することで、糖化をあえて遅くします。この工程がオイリーな特徴をウイスキーに持たせます。
また、スコッチと比較して大きなポットスチルを使用し、3回蒸留を行い、アルコール度数80%以上にしてから、加水で薄めます。ある意味、ポットスチルで連続式蒸留に近い状態にします。(連続式よりも風味は残りますが)。
引用元:How manufacturer took control to reduce energy consumption by 17% - Pinergy
単式蒸留、連続式蒸留の違いを知りたい方は、以下参照ください。
chikurya-whisky-tokidokiwasyoku.com
モルトウイスキー
●原料:モルトのみ
●蒸留:単式蒸留で3回蒸留 ※銘柄によっては2回
スコッチ同様、モルト100%使用したウイスキー。シングルモルト・アイリッシュウイスキーと呼ばれたりもします。
グレーンウイスキー
●原料:モルト、トウモロコシ、大麦(未発芽)等
●蒸留:連続式蒸留
スコッチ同様の主原料で造られます。
ブレンデッドウイスキー
シングルポットスチルウイスキーやモルトウイスキーとグレーンウイスキーをブレンド。特にシングルポットスチルウイスキーとブレンドしたものは、アイリッシュブレンドらしい味わい。
アイリッシュ・ウイスキーの蒸留所について
かつては、アイリッシュを押さえてウイスキー製造No1の地位を確立していました。その為、今では噓のようですが、数百という蒸留所が存在していました。しかし現在主な蒸留所は以下4つとなっております。
・ブッシュミルズ(北アイルランド)
・ミドルトン(アイルランド共和国)
・キルベガン(アイルランド共和国)
・クーリー(アイルランド共和国)
1920年から衰退の一途を辿り、1970年代に入ると蒸留所の統廃合が進んでいきます。当時残っていた蒸留所が生き残りをかけて、すべて国境を越えて合併し、アイリッシュ・ディスティラーズ・グループ(IDG)を設立します。その際に蒸留所が以下2つに集約されます。
・ブッシュミルズ(北アイルランド)
・ミドルトン(アイルランド共和国)
徐々にアイリッシュの立て直しに向けてウイスキー造りが行われるようになり、1989年にクーリー蒸留所、2007年にはクーリーがキルベガンを復活させ、現在の4大蒸留所となりました。統合の歴史から、各蒸留所が複数のブランドを持ち製造・販売しているのもアイリッシュらしい特徴の一つです。
アイリッシュ・ウイスキー主な銘柄
■ジェムソンスタンダード
3回蒸留したシングルポットスチルとグレーン原酒をブレンドしたアイリッシュブレンド。最もアイリッシュで売れている。
アイリッシュらしく、ユーカリ油等のアロマを感じ、香ばしさもある。ボディーも非常にライトで滑らかであるが、その中にナッツやオイルを感じる。バランスが良く、アイリッシュ版ジョニーウォーカーといったところか。
■ブラックブッシュ
現在アイリッシュの中で一番、勢いのあるブッシュミルズが製造するウイスキー。アプリコットのようなフルーティーで上品なアロマを持ち、ボディーは3回蒸留している為、軽めでさらっと飲める。ライトボディにも関わらず、熟成された奥深さがあり、満足できる銘柄。日本人も好むであろう飲みやすさ。ロックが一番おいしいと感じる。
■カネマラ
アイリッシュで唯一のピーティーなシングルモルト。非常に攻めてくるスモーキーさ。これはアイリッシュからアイラ島に寝返ったのか?!と思われるかもしれませんが、そうではありません。スモーキーさの中に、アイリッシュの特徴を感じます。
スモーキーさの中に、バーボン樽由来のバニラやハチミツを感じ、その後チョコレートの様な味が広がります。そしてフィニッシュはスパイシー且つドライ。
以上、本日はアイリッシュウイスキーについて見てきました。アイリッシュも奥が深く楽しめる銘柄が多いですよ。是非楽しんでみてください。