ウイスキー、時々和食

-CHIKURYA WHISKY-

【スコッチ】キャンベルタウン・モルトウイスキーの特徴と銘柄について

【1】キャンベルタウン・モルトウイスキーの特徴が理解できる。

【2】キャンベルタウン・モルトウイスキー銘柄の一例を知れる。

 

 かつては、小さな港町であるキャンベルタウンに30を超える蒸留所がありました。しかし現在では3か所のみ。なぜ、これほどまでに蒸留所の数が減ったのでしょうか。またどのような特徴があり、どのような銘柄があるのでしょうか。それでは見ていきましょう!

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 スコッチ6大産地について知りたい方は以下を参照下さい。

chikurya.hatenablog.com

キャンベルタウンについて

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 場所はスコットランドの西側、キンタイア半島の先端付近に位置し、立地が北米への海上輸送を行う上で適しており、船を動かす上で必要となる炭鉱も盛んでした。その為、30を超える蒸留所で造られたスコッチは、北米へ多く輸出されることとなり、スコッチ製造の中心地となっていきました。

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 しかし、現在ではそれらの産業は衰退してしまい、人口も5,000人弱の小さな港町となってしまいました。蒸留所の数も約34あったのが現在では3蒸留所のみとなっています。当時は、ニッカウヰスキーの創業者である竹鶴政孝がウイスキー造りを学ぶために留学したのもこの地であり、如何に栄えていたのかを想像する事ができます。

 

それでは、何故キャンベルタウンのウイスキー造りは衰退したのでしょうか?複数要因がありますが、一番は自業自得というべき理由でした。

■キャンベルタウン・モルトウイスキーの衰退の主要因

一番の要因は、購入先のアメリカに対して、粗悪な製品ばかり輸出していた為

 は?と耳を疑いたくなりますが、事実なんです。アメリカでは飲酒に対して批判的な考えを持つピューリタン(清教徒)が中心となり、運動を起こし、1920年にアルコールの製造・販売を禁止する『禁酒法』が施行されました。

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引用元:禁酒法がアメリカのお酒の歴史にもたらした変化を学ぶ|CHEER UP! 毎日のワクワクした暮らしを応援するポータルメディア (sapporobeer.jp)

 その際にキャンベルタウンの人々は、『密輸してでも購入したいはずだから、質が悪いウイスキーをアメリカに回したろか!』と考え、粗悪品ばかり輸出してしまいます。

 確かに、当時のアメリカはウイスキーが手に入ればいいという状況でしたので、その当時は購入されました。しかし、禁酒法が終わる1993年以降、『あんなまずいウイスキーもう飲みたくないわ!』とアメリカ内で、キャンベルタウン・モルトウイスキーのブランドが失墜しており、急激に輸出先を失い、衰退することとなりました。

キャンベルタウンの主な蒸留所について

 現在の残っている蒸留所は3か所のみであり、それらの蒸留所は上記の時代の波に流されず、堅実に品質を確保して製造してきました。堅実に行うという事の重要性を学ぶ良い事例です...

・スプリングバンク

・グレンズスコシア

・グレンガイル

※グレンガイルはスプリングバンクが80年ぶりの2004年に再開した蒸留所。

キャンベルタウン・モルトウイスキーの特徴について

 麦芽の味の中に、独特の『塩辛さ』を感じます。この塩辛さは一般的に『ブリニー』と表現されます。ピート香や潮の味はあるが、アイラ・モルトウイスキーとは違う香りと味です。またボディーは若干重めでオイリーな感じです。

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主要な銘柄について

■スプリングバンク

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 レモンの中にメープルのような甘い香りがあり、テイストも柑橘系とメープルのような甘めながら飲みやすい銘柄。またしっかりとした味わいである。原料にかなり拘りを持っており、フロアモルティングで麦芽自給率100%。蒸留回数も2.5回とこだわりがあり、キャンベルタウンの蒸留所が衰退していく中、品質を保ってきた誇りを感じる。

 香りが非常に上品で『モルトの香水』と呼ばれる程である。大人の少し気の強い女性ってイメージを勝手に持っています。

 

■キルケラン

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 スプリングバンクと姉妹蒸留所であり、2004年に80年ぶりに復活したグレンガイル蒸留所の銘柄。

 スプリングバンク同様、レモン等の柑橘系の香りと、甘い香りがしますが、スプリングバンクがメープルの香りに近いのに対して、キルケランはよりバニラの様な香りが特徴です。テイストはキャンベルタウンの特徴をしっかり持っており、柔らかいピート香の中に、ブリニーを感じます。

 ラベルには蒸留所から見える教会が描かれており、デザインもカラフルでとてもかわいいですよね。

 

■ロングロウ

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 こちらもスプリングバンク蒸留所で製造される銘柄であり、ピートがしっかり炊き込まれており、スモーキー。飲み口は非常にドライであり、スプリングバンクとは全く別のウイスキー。

 

■ヘーゼルバーン

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 当時あった、『ヘーゼルバーン蒸留所』の名前から付けた、銘柄。竹鶴政孝が留学した蒸留所であり、ニッカウヰスキーは少なくとも影響を受けている。

 ピートを焚かないモルトを使用しており、且つ3回蒸留していることから、軽く飲みやすい。小学校の給食で出てきた、イチゴジャムのような味がする気がする。そう感じるのは私だけ...??

 

 以上、本日はキャンベルタウン・モルトウイスキーを見てきました。蒸留所自体は少ないですが、時代の波に乗らず、品質を担保し続けたとても良い蒸留所ばかりです。是非、多彩な味とそこに感じるブリニーを楽しんでみてください。