【1】単式蒸留と連続式蒸留の違いが分かる
【2】どのようにウイスキーの味に違いが出るのか分かる
ウイスキーを知っていく際に、良く出てくるフレーズ『単式蒸留』『連続式蒸留』。一体これらの蒸留はどのような方法なのでしょうか。また、ウイスキーの味にどのような違いを生み出すのでしょうか?今回はその点について深堀してみます。
ウイスキー製造の工程について
ウイスキーの製造過程を大まかに分けると以下のようになります。
■ウイスキー製造過程
・モルティング(製麦)
・マッシング(糖化)
・発酵
・蒸留
・熟成
今回は上記の中で、蒸留に絞って解説していきます。
単式蒸留器と連続式蒸留器の仕組みと違いについて
深堀を始める前に、そもそも蒸留とは何なのか簡単におさらいします。
蒸留(じょうりゅう、英: Distillation)とは、混合物を一度蒸発させ、後で再び凝縮させることで、沸点の異なる成分を分離・濃縮する操作をいう。 Wikipediaより
ウイスキーを蒸留する目的は、アルコール度数を高める事になります。(保存性を高める)アルコールと水の沸点の違いを利用して、アルコールだけを蒸発させて、冷却することで度数を高めていきます。※アルコール沸点78.3℃、水100℃
上記が、蒸留の一般的な装置となりますが、単式蒸留と連続式蒸留とではどのような違いがあるのでしょうか。それでは解説していきます。
■単式蒸留(ポットスチル)について
皆さんが一度は写真等で見られた事があるであろう、以下の装置を使用して蒸留します。単式蒸留は、主にモルトウイスキーやポットスチルウイスキーで使用されます。
引用元:https://www.whisky.com/whisky-database/distilleries/details/ardbeg.html
簡単に言えば、先ほど蒸留の解説で図示した装置と同様の方式になります。
一般的に単式蒸留のメリット・デメリットは以下になります。
・メリット:原料の風味が残りやすい
・デメリット:大量生産できない/万人うけしにくい味
それでは、なぜ単式蒸留の場合、原料の風味が残りやすく、一方で大量生産できないのでしょうか?その点を考察します。
単式蒸留の方式では、一回の蒸留で生成できるアルコール度数は、原液の約3倍程度となります。蒸留する前のウイスキーの原料(ウォッシュ)はアルコール度数が約7%の為、スコッチでは基本2回蒸留を行います。ちなみに、1回目を初留、2回目を再留と言います。そしてその後、加水して適切なアルコール度数に調整します。また、連続的に原料を投入し続けられない為、大量生産が難しい状況となります。
一方、連続式と比較して、熟成する為に必要となる度数に近い形で蒸留ができる為、原料の風味が残りやすくなります。これは、アルコール純度100%に近ければ近いほど原料の成分が残らない蒸留の原理によるものです。消毒用のアルコールでは原料の風味は感じないですよね?それと同じ理屈です。
■連続蒸留(パテントスチル)について
次に連続蒸留(パテントスチル)について解説します。連続蒸留は以下の写真のような装置を用います。主にグレーンウイスキーやバーボンウイスキーで使用されます。
引用元:How to visit us_Visit | Kavalan Whisky
蒸留の原理としては、以下の写真のように、単式蒸留器が複数個搭載されているイメージとなります。その為、一度原料(ウォッシュ)を投入すると、90%以上のアルコール度数で蒸留されます。また、原料を連続的に投入可能であり、大量生産が可能となっています。
引用元:【ウイスキー基礎講座】 製造工程 ~蒸留(ディスティレーション)~ | 医学生モンジュのブログ (monju-blog.com)
一度に、高アルコール度数まで蒸留する為、単式と比較して原料の風味は感じなくなります。そして、加水をして40度台のアルコール度数まで調整します。その為、この方法で製造される、グレーンウイスキーは『サイレントスピリッツ』と言われるほど個性が少ないウイスキーとなります。連続式のメリット・デメリットは以下となります。
・メリット:大量生産可能/クリアな味
・デメリット:原料の風味が少なく、個性がない
そして、両方の良さを掛け合わせるため、モルト原酒とグレーン原酒をブレンドした、ブレンデッドウイスキーがこの連続式蒸留器の発明後生み出され、スコッチウイスキーが世界的に広まる契機となります。
以上、本日は単式蒸留と連続蒸留の違いについて見てきました。